政府が貯蔵するお米は、災害や不作など不測の事態に備え、私たちの食生活を守る重要な役割を担っています。
しかし、そのお米も古くなると入れ替えが必要です。
この記事では、
備蓄米がどんな時に役立ち、
入れ替えられた古いお米がその後どうなるのか、
意外な使い道や価格の決まり方、
そしてなぜ私たちの食卓には並ばないのか
その理由を調べたのでお伝えしますね。
貯蔵したお米は、どんな時に使われるの? ~災害や大不作の時に~
政府が貯蔵しているお米は、国民の食料安定供給という重要な目的のために保管されています。
特に、思いがけない事態に備えることが備蓄の大きな理由です。
具体的には、以下のような場合に備蓄米が活用されます。
凶作・不作対策
天候不順などにより、お米の収穫量が大幅に減少した場合に備蓄米を放出します。
市場への供給量を確保することで、市場の混乱を防ぎます。
国民に安定的に供給できるようにします。
特に1993年の記録的な米不足の教訓から、現在の備蓄制度が整備されました。
大規模災害対策
地震や台風などの大規模な自然災害が発生します。
被災地で食料が不足した場合に、救援物資として迅速に供給するために使われます。
東日本大震災の際には、応急食料として精米の供給が強く要請された経験があります。
需給と価格の安定
お米の収穫量が多すぎて価格が暴落しそうな場合には政府が買い支えます。
逆に供給が不足して価格が高騰しそうな場合には備蓄米を放出します。
市場の急激な変動を緩和する役割も担っています。
ただし、備蓄運営においては、政府による買入・売渡が市場へ与える影響を避けるため、通常は主食用途に備蓄米の売却を行わない棚上備蓄が実施されています。
これまでですと備蓄米が市場に供給されるのは、主に大不作などの場合のみです。
おおむね100万トン程度の備蓄米を常に貯蔵するのが政府の目安
これは、10年に一度程度の大規模な不作や、通常程度の不作が2年連続した場合にも、国産米をもって対処し得る水準とされています。
古い備蓄米はどうなるの? ~ごはんでない使い道~
貯蔵されたお米は、長期間の保管によって品質が徐々に変化するため、一定期間で新しいお米と入れ替えられます。
基本的な運用として、貯蔵されたお米は通常5年程度保管された後に、順次新しいお米と入れ替えられます。
この入れ替えによって生じる古いお米は、主に主食用以外の用途に回されます。
主な用途としては、以下のようなものがあります。
飼料用
家畜の餌として利用されます。
加工用
日本酒や味噌、米菓などの食品加工の原料として利用される場合があります。
ただし、古い備蓄米は主に非主食用途として販売されるため、飼料用が多いと考えられます。
食料支援など
不足している地域への食料支援などに活用されることもあります。
また、政府は一部で精米(無洗米)形態での備蓄も実施しています。
こちらも備蓄期間を経過した精米については、通常は非主食として販売されます。
ただし、大規模災害が発生した場合は、本来の目的どおり被災地等に供給されます。
このように、古い備蓄米は品質維持のサイクルの中で発生し、様々な「ごはんではない」使い道に活用されています。
古い備蓄米の値段はどうやって決まるの?
家畜の餌など非主食用として販売される古い備蓄米の価格は、政府が農家から買い入れた際の価格がそのまま反映されるわけではありません。
一般的に、飼料用として売却される備蓄米の価格は、以下のような要因を考慮して決定されます。
入札制度
多くの場合、競争入札によって売却価格が決定されます。
複数の業者が購入希望価格を提示し、最も高い価格を提示した業者が落札する仕組みです。
市場価格
その時々の飼料用米の市場価格や、トウモロコシなど他の飼料穀物の価格動向が影響します。
需給バランス
飼料用米の需要と供給のバランスによって価格が変動します。
品質
備蓄米は長期間保管されているため、新米と比較すると品質が劣る場合があります。
そのため、飼料用としての品質評価が価格に反映されます。
用途限定
主食用への転用を防ぐための措置が取られる場合があります。
破砕処理などが行われ、そうした条件も価格に影響することがあります。
政策的な判断
主食用米の市場価格に悪影響を与えないようにします。
また、国内の畜産業のコスト負担なども考慮される場合があります。
したがって、政府が農家から買い入れた価格に関わらず、飼料用として売却する際には、その時の市場環境や用途などを踏まえて価格が決定されます。
古い備蓄米は普通の「お米」として売られないの? ~安易な転用を防ぐ理由~
古い備蓄米が家畜の餌などに回された場合、原則として主食用米として市場に出回ることはありません。
これは、安易な主食用への転用を防ぐための制度的な理由と、市場への影響を考慮した措置によるものです。
主な理由は以下の通りです。
国の制度・目的の違い
飼料用米は、家畜の飼料としての利用を目的として生産されるものです。
水田の有効活用や食料自給率向上などの目的で国からの補助金の対象となっている場合があります。
この補助金は飼料用としての利用を前提としているため、他の用途に使うことは制度の趣旨に反します。
一方、主食用米は人が食べることを目的として、異なる品質基準や流通経路で管理されています。
市場の混乱防止
飼料用米は一般的に主食用米よりも安価です。
もし安価な飼料用米が主食用として市場に流通すると、主食用米全体の価格が下落します。
真面目に主食用米を生産している農家の経営を圧迫する可能性があります。
これは市場の混乱を招くことになるため、転用が禁止されています。
品質と安全性の管理
主食用米は食品としての厳しい品質管理基準があります。
飼料用米は家畜の飼料としての基準で管理されます。
元の米は同じでも、流通経路や管理方法が異なります。
安全性の観点からも区別されています。
不正転用防止措置
飼料用米の不正な主食用への転用を防ぐため、流通段階で着色を行ったり、破砕処理を行ったりする措置が取られることがあります。
これらの理由から、一度「飼料用」など非主食用途として区分された備蓄米は、原則として普通の「お米」として市場で販売されることはありません。
もし飼料用米を不正に主食用として販売した場合は、関連する法律に基づいて罰則が科されることもあります。
【まとめ】備蓄米の仕組みとは?貯蔵から最終用途までの流れを解説
政府が備蓄するお米は、災害や不作といった不測の事態から私たちの食料安定供給を守るための重要な役割を担っています。
役目を終えた古いお米も、飼料や加工品として無駄なく活用され、その価格決定や流通には市場の混乱を防ぎ、食の安全を守るための厳格な仕組みと配慮があります。
私たちの食生活を陰で支える備蓄米制度について、ご理解いただけたでしょうか。
今まであまり知らなかった備蓄米の仕組み。
この機会に覚えてしまいましょう。
それではこの辺で。
ここまで読んで頂きまして誠に有り難うございました。
嬉しい楽しい、ついてます。
感謝
泉水善光